
外国株の種類
同社の部品通販というサービスによって、金型業界は必要な金型をほぼリアルタイムで入手できるようになり、部品倉庫が事実上不要になるなどの恩恵をこうむった。
Mの通販は業界を席巻し、新たな市場を生み出してしまったのである。
そしてMは通販というビジネスモデルを生かし、医療や食材など金型部品以外のさまざまな部品や原材料などにも通販のビジネスを広げていったのである。
Mにとっては、この「企業向けの部品通販」という仕組みが、新商品開発のための最大のリソースになったということなのだ。
リソースというのは必ずしも技術や原材料などを意味するわけではない。
Mのように、目に見えないビジネスモデルというリソースを有効活用することでも、新たな商品を開発することは可能なのである。
マーケティング価値というと何か難しい言葉に聞こえるが、要は新しい売り方を作り出すという役割である。
最もわかりやすい例は、挙げたオフィス用品通販のアスクルだろう。
文房具業界は昔から小規模な文房具店を中心とした販売網が充実していて、販売チャネルはなかば固定化されていた。
そしてそうした販売チャネルで圧倒的な強さを誇っていたのが最大がじよう手のコクヨだった。
二番手グループのプラスはコクヨの牙城を崩そうと頑張ってきたが、せっかく素晴らしい商品を開発しても販路の開拓が難しく、市場シェアを拡大することはできなかったのである。
そんな時にライオンからの転職組だったプラス経営メンバーのI氏(現アスクル社長)が中心となり、まったく新しいカタログ通販の仕組みを作り上げたのである。
このビジネスが成功し、アスクルはプラスから分社されて子会社となり、経営メンバーだったI氏は社長に就任することができた。
これまでの文房具店中心の販売チャネルのしがらみを脱ぎ捨て、カタログ通販という新たな売り方を開発し、成功したのである。
あるいはM証券の成功も、典型的ケ−スとしてわかりやすいかもしれない。
同社はもともと大正七年(一九一八年)に創業された老舗の証券会社で、他の証券会社と同じように外務員を中心にした証券取引ビジネスを手がけていた。
だが現社長のT氏が一九八七年、経営者だった義父の後継として入社したことから、大きく運命が変わった。
M氏は一九九五年に代表取締役社長に就任すると、さまざまな改革を行うようになったのである。
もっとも大きかったのは、これまでの外務員中心主義をあらためて、インターネットを使ったオンライン取引に傾斜したことだった。
きっかけは、M氏が社長就任直後の九六年にアメリカにわたり、当時アメリカで大ブ−ムになっていたインターネット証券会社を視察して回ったことだった。
シリコンバレーの中核として知られるスタンフォード大学の技術者たちに協力してもらい、独自のオンライン取引システム「ネットストック」をスタートさせ、インターネット証券として再スタートを切ったのである。
そして店舗や外務員システムも廃止してしまい、証券各社で横並びだった各種取引手数料も思い切って値下げし、ネット専業証券への道を歩んだ。
これによってM証券は他社に先駆けて、インターネット証券の大手の地位を築くことに成功したのである。
M証券の成績は現在も絶好調で、たとえば二OO五年四月に発表された二OO五年三月期の連結経常利益は、個人投資家の株売買が活発だったことも反映し、二百二十五億円と前年同期に比べて大きく増やしている。
M証券のケ−スは、証券取引という既存の商品を生かしつつ、インターネット取引という新しい売り方を開発したことで成功した典型的な例と言える。
しかも同社は、従来型の売り方だった店舗や外務員をすべて廃止してしまい、新しい売り方であるインターネットのオンライン取引専業になるというドラスティックな大改革まで行ってしまったのである。
この大英断を手がけたのはM社長だが、それを実践するにあたって異業界から参加した当時の経営メンバーが中心となって活躍した。
ネット専業証券への転換は、経営メンバー的なパワーを思う存分に発揮した好例と言えるのではないだろうか。
しばらく前、その経営メンバーの一人とじっくりとお話をうかがう機会を持てたことがある。
その時私に、彼はかなり興味深い話をしてくれた。
「もともとは証券会社というのは特定の株が値上がりするのか値下がりするのかといった、株式情報も含めて顧客に提供することで価値を生み出していたんです。
乱暴なたとえをすれば、雀荘で従業員が客のかわりに代打ちするようなビジネスモデルだったんですね。
そのモデルをM証券は変更し、代打ちをしないで雀荘という場だけを提供するビジネスに変更したんです」とてもわかりやすい説明ではないか。
この話に、私はいたく感動した。
あくまで証券取引の仕組みだけを提供し、その仕組みの使いやすさを徹底的に追求することで、新たな顧客を得るようになった。
M証券の「売り方」は大きく変わったということなのである。
M証券やアスクルだけではない。
ほかにも直販だったビジネスを代理店システムに切り替えたり、あるいは海外向けに新しい売り方を開発するなど、さまざまな応用例が考えられるだろう。
アスクルやM証券のように、経営メンバーにとっては、まったく新しい販売チャネルを作ることも三つの重要な役割のひとつである。
会社の価値というのは、商品や販売ル−トにだけ存在するわけではない。
どんなに素晴らしい商品や売り方を持っていたとしても、総務や人事、経理といったシステムがずさんなままだと、会社は売上は上げられるかも知れないが、利益を出すことは非常に難しい。
「縁の下の力持ち」的なイメージの強い管理部門だが、会社が利益を生み出すためにはこの部門の充実が必要不可欠なのである。
言い換えれば、この部門の価値を高めることによって、会社の価値は何倍にも高まっていくのである。
そしていまや管理部門のカバーする範囲は、企業のあらゆる場面に広がっている。
人事や経理、総務だけではない。
最近何かと注目の集まっている知的財産保護や、コンブライアンス(法令遵守)、CSR(企業の社会的責任)などの分野も、組織運営改善の対象となる。
組織運曽の役割の力ギは、会社の内部に抱えている課題を先手を打ってやりきってしまうことである。
管理部門は受け身に見えるけれども、先手を打って組織運営の仕組みを変えれば、それはたいへんなコアコンピタンスにもなりうる。
そして管理部門の仕組みをドラスティックに変更できるのは、経営メンバーならではの仕事なのである。
管理部門の仕組み変更というのは、たとえば他の企業に先駆けて、日本で初めてといっていいぐらいの管理システムや人事システムを導入するといったことが挙げられるだろう。
新しい危機管理の仕組みを導入して、リスク分散の新しい手法をいち早く取り入れたり、あるいは契約社員やパート、アルバイトの雇用形態などに手を加えて、従業員たちにこれまで以上の満足を与える新たな雇用スタイルを生み出すということもあるだろう。
こうした方法を採用し、先手を打って組織を変えていく。
それが経営メンバーの大きな三つの役割のひとつなのだ。
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